万物理論という、世界の全てを記述する物理理論をめぐるアレヤコレヤを描いたお話。まずはなにより宇宙の存在を前提として、その宇宙に隠された様々な法則を解き明かすのが所謂科学だとしたら、この話の主役はその科学とは真逆の考え方。全てを記述する理論(万物理論)を理解する者を前提として、その者を中心に(時間的にも空間的にも)世界は生成される(はず)。しかし、その理解は同時に、世界を収縮させ、全てを一つにしてしまう(かもしれない)。「我思う、故に我あり」と言ったのはデカルトでしたっけ。今我々が存在する世界は、(この先現れるであろう)万物理論を理解する者によって(時間に逆行して)生成されたもの。理解者の出現(が無ければ世界は存在し得ない)によって、崩壊する世界。シュレディンガーの猫は、観測されるまでは生きているのか、死んでいるのか、分からない。万物理論は、世界の全てを生成させるが、世界の全てを崩壊させる。表と裏、光と影、陰と陽、メビウスの環。
全体の構成としては、終盤の勢いは結構良いんだけど、そこに至るまでの流れがダラダラしてる感じなのと、終わり方が強引な気がした。まあ、でも、これはトンデモ理論や妄想未来世界を楽しむ物語だろうから、話の筋は重要ではないのかもしれない。宇宙消失も、量子力学的興奮は凄かったけど、話の筋はグダグダだったからなー。