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Greg Egan / DISTRESS


万物理論という、世界の全てを記述する物理理論をめぐるアレヤコレヤを描いたお話。まずはなにより宇宙の存在を前提として、その宇宙に隠された様々な法則を解き明かすのが所謂科学だとしたら、この話の主役はその科学とは真逆の考え方。全てを記述する理論(万物理論)を理解する者を前提として、その者を中心に(時間的にも空間的にも)世界は生成される(はず)。しかし、その理解は同時に、世界を収縮させ、全てを一つにしてしまう(かもしれない)。「我思う、故に我あり」と言ったのはデカルトでしたっけ。今我々が存在する世界は、(この先現れるであろう)万物理論を理解する者によって(時間に逆行して)生成されたもの。理解者の出現(が無ければ世界は存在し得ない)によって、崩壊する世界。シュレディンガーの猫は、観測されるまでは生きているのか、死んでいるのか、分からない。万物理論は、世界の全てを生成させるが、世界の全てを崩壊させる。表と裏、光と影、陰と陽、メビウスの環。

全体の構成としては、終盤の勢いは結構良いんだけど、そこに至るまでの流れがダラダラしてる感じなのと、終わり方が強引な気がした。まあ、でも、これはトンデモ理論や妄想未来世界を楽しむ物語だろうから、話の筋は重要ではないのかもしれない。宇宙消失も、量子力学的興奮は凄かったけど、話の筋はグダグダだったからなー。

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James Patrick Hogan / Giants' Star


星を継ぐ者」、「ガニメデの優しい巨人」に続く第三部。この第三部を一言で表すならサスペンスでしょうか。前二作から残されていた謎も、話の流れの中で解き明かされますが、そこはメインではないような印象を受けました。謎解きよりは、政治的駆け引きや心理戦に重きを置いていると思います。ほとんどの謎は解けたけれど、また新しい謎も生まれてきたりして、結局は無限ループですね。歴史は繰り返すのです。

独断で、この第三部に順位をつけるとしたら、普通に良い話で終わってしまった第二部よりは面白いものの、科学者・研究者の奮闘を描いた第一部の面白さには適わない、という感じです。第一部は偉大でした。

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James Patrick Hogan / The Gentle Giants Of Ganymede


星を継ぐ者の続編です。謎解き・研究活動の雰囲気は薄れて、異星人との心温まる交流がメインになっていて、前作ほどの興奮はありませんでした。普通に良い話で終わってしまっているような、物足りなさ。面白い小説なのは間違いないんですけどね。Science Fictionではなくて、Fantasyと呼んだほうが適切な気がします。

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Greg Egan / Quarantine


すげーおもしろい。話の展開は、どんどん脇道に逸れていくような気もするけど、それはどうでもいいと言っていいくらい。ニューロンの接続様態を操作して特定の機能を持たせられる世界。量子力学的世界においては、存在は確実なものではなく、確率で表される。ということを逆手にとって、平行世界の「存在」を示す。世界は、存在が確定したものではなくて、確率的にほぼ無限に平行に存在する。人間だけが、一意の世界を確定する「能力」を持っている種族だった。世界を一意に確定する=それ以外の無数にある可能性世界を消滅させる=大量虐殺。何をバカなことを言っているのか、と冷静に突っ込みを入れるよりも、この、頭のネジが何本も飛び出そうな奇想天外な妄想を楽しむべきだと思う。全ての瞬間に、全ての可能性が平行して存在、無限に広がり続ける宇宙。ほんと面白くて、一日で一気に読み終えた。ほかのイーガン作品も読まなきゃ。

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Robert A. Heinlein / The Moon Is a Harsh Mistress


流刑地・奴隷農場のような扱いを受けていた月が、地球からの一方的な支配を逃れ、一つの国として認められるまでの革命のお話。月世界独自の文化が面白いです。完全に女性上位社会。それだけじゃあないけれど、それが一番キャッチーな部分だと思います。SF的な部分としては、知性を持ったコンピュータが登場するところがポイントになるんでしょうか。俺は、革命に伴うあれやこれやで、SF世界を舞台にした哲学・思想書のような感じで読みました。全然わかりませんよね。俺も理解しきれてません。