イーガンをあらかた読んでしまったので、次は日本人作家のSFを読んでみよう。ということでamazonの書評を参考に買ってみた一冊。これまた短編集ですね。収録されている四編ともはずれなし。「漂った男」の最後の短い一文を読んだときは軽く震えたなあ。十年以上も一人で海を漂いつづけるなんて普通の精神力じゃ無理だよ。この人の書く話は細かい設定と大きな流れと両方のバランスが良くてとても読みやすいと思う。
飛浩隆 / 象られた力
短編集。どう考えても表題作「象られた力」が飛びぬけて面白い。言霊のように図形が力を持つという設定で、最後はその図形の力が暴走してしまうというお話。何人かの登場人物の視点を入れ替えながら時系列を追っていく書き方も効果的だと思う。「象られた力」以外の収録作は正直なところファンタジー的要素が強すぎる感じがしてそこまでぐっとこなかったけれど決して面白くないわけではない。
藤崎慎吾 / レフトアローン
クリスタルサイレンスの前日談や後日談などが収録された短編集。ぐっときたのは「猫の天使」。視神経をハックして猫の視点を手に入れるというアイディアは目立って面白いわけではないけれど、終盤になって熱や空気の流れまでが視覚情報に統合されていくあたりは結構惹きこまれる。犬とか猫とか動物はたまに何も無い(ように人間には見える)場所をじっと見てたりするけど、この話の中の猫は生命エネルギー(魂)を「クラゲ」のようなものとして見ていることになっている。霊が見えていると言われるよりは受け入れやすいよね。
藤崎慎吾 / クリスタルサイレンス
火星の北極の氷の中から生物の殻が発見されたことをきっかけに火星上で色々と異常事態が起こっていくというような話。物理的な領域での謎解きかと思って読んでいたら、下巻ではネットワーク上での話がメインになったりして少し戸惑う。特に、ウェットウェアという人の脳をフォーマットしてリモートコントロールなどを可能にする技術が出てくるのだけど、こいつのせいで一人の人物が物理世界でいくつもの体を持つうえに仮想世界にもアバターを持っていてかなりややこしい。色々と要素を盛り込みすぎて解決しきれていないような消化不良感が結構残るけど、まあそれなりには面白いと思う。話が逸れていく勢いはイーガンの宇宙消失に似ている。
ちょっと、あまりにもスパムなコメントが多すぎるので全角文字を含まないコメントは弾くようにしました(設定が間違っていなければ)。具体的には、NP_BLACKLISTプラグインをインストールして、「全角文字を含まないコメントをはじく」という正規表現をNGワードとして登録しただけです。いまのところ日本語でしか記事を書いていないし、半角文字だけのちゃんとしたコメントが付いたことも無いので、この設定で当面は問題ないかと思ってます。
なんか昔のコメントスパムは有料サイトへ誘導するとかの、まだ意味のある内容だったと思うのだけど、最近のは本当に意味の無いスパムも増えていて余計に疲れます。
2007/01/23追記
NP_BLACKLIST 0.98jp9だと、上記の全角文字を含まないコメントを弾く正規表現が上手く動作しないようです。0.98jp8だと問題ないようですが……。